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お引っ越し [Noah's Ark Project]

この度、接続業者の切り替えに伴い、ブログを引っ越す事になりました。

http://ameblo.jp/hiromi-yoda/

最近ではすっかり更新も滞っていましたが、もう少しがんばってみようと思います。

so-netさんには長い間お世話になりました。
ありがとうございました。
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カミーノ・デ・サンチアゴ~出会い [旅]

9月の始めでこんなに寒いとは思ってもみなかった。
まあ、峠を越してきたんだから寒いのは仕方がないとは言え、峠を下りて到着したアルベルゲもまた寒かった。

初めての宿泊で、そこがいったいどんなところなのか?
「好奇心」と「疲れ」と「ためらい」と「不安」がごちゃ混ぜになっていた。

リュック.JPG

どうやらそれらしい建物に入る。
修道僧らしい格好をした案内人が指さす方へ行くと受付があった。
古めかしい建物だ。修道院だろうか?だろうね。いやきっとそうだ。

おー!何か雰囲気っぽい。いやー、やっと巡礼って感じがしてきた。
ここに泊まるのかー、と思ったら、ずっとウラの方へ案内される。と言うか行けって言われる。
そちらは何か、やたら辺鄙な場所だ。
小さい池をわたる。あたりはもうすっかり真っ暗だ。
当然ながら、照明の準備はしていない。リュックの中だ。




パラパラと人のいる方へ歩くと、野原にバラックが並んでいた。
案内棟で受付をして自分の棟へ。
2段ベッドが3つほど押し込まれたバラック。本当にただ寝るだけだ。
なーんだ。あの修道院に泊まれるんじゃないんだ。ちょっぴり残念。
でもまあ覚悟は出来ている。
はなっからまともなホテルに泊まれるなんて思っちゃいない。

僕は入り口を入って右上のベッドにバッグを投げ入れるとシャワーを浴びに行った。

冷たい。仮設なので、満足にお湯が出ない。
鏡をのぞくと、目は落ちくぼんで、頬もげっそりしている。
まるで自分じゃないみたいだ。
歩くのに夢中で自分では気がつかなかったが、僕はかなり消耗しているのだ。
それにしてもよくここまで歩いてきたものだ。

目印1.JPG

疲れすぎて食欲もないが、とりあえず何か食べなければ。
最初に受付をした修道院らしきところまで戻って食堂を探す。
修道院自体が町はずれに建っているため、周りにはほとんど何もない。
一カ所だけあるバルに入る。

バルは混んでいた。



バルは大きく2つに分かれていて、右にレストラン、そして左が通常のバル。
どちらも混み合っていた。
それもそのはずで、飲み食いできる場所はこの辺ではここしかなく、しかも、これは後で聞いた話だが、その日は巡礼者の数が多過ぎて、通常の宿泊施設ではまかないきれずに仮設のバラックまでいっぱいなのだ。

バルは正面にカウンターが有り、右の壁際に若干のテーブルとイスがおいてある。
僕は、びっちり混んでいるカウンターに歩み寄り、一人で切り盛りしているイケ面にテーブルに座りたいんだが、と言ってみた。
疲れているので座りたかったのだ。
レストランに行けばちゃんとしたテーブルに案内してくれるんだろうが、一人きりでは嫌だし、まして高級そうなレストランに何かはいるつもりは全くなかった。
しかし、当然ながら一人客にテーブルを使う権利はないようだった。

仕方なくカウンターで立ち飲みする事にする。
ビールだけ。残念ながら、食べるものはない。

しかし、幸いな事にwi-fiの電波が使えた。パスワードがかかっていない。
暇なので、mixiで日記を書く事にした。

すると、そこに日本人女性が入ってきた。
周りは皆西洋人で、複数で来ているので誰も僕の事を気にかけずにいてくれるので、僕も日記を書く事に集中していた。
ふと顔を上げた瞬間に目が合ったので、思わず声をかけた。
「日本からいらしたんですか?」
彼女はにっこり笑って答えた・・・ハングルで。

彼女はカウンター越しに店員と何やら話している。
どうやら持っているクーポン券を使えるかどうか訊いているようだった。
でも、店員は首を振るばかり。
せっかく韓国から持ってきたのに。
彼女は残念そうに帰っていった。そもそも、ここで帰るのはポテチやスナックの類しかないのだが。

僕もバラックに戻り、寝袋に潜り込んだ。
こうして巡礼1日目が終わった。
ただひたすら寒かった。
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カミーノ・デ・サンチアゴ~ピレネー越え [旅]

初日はピレネー山脈越え。

それは,はなっから知っていた。
1,500mだっけ?2,000mだっけ?よく分からないがまあ高いんだな。
確か、長野で野宿したときに2,000mより高い場所で、えらい寒い思いをしたのを覚えている。
が、標高と言ったって、あまりピンとこない。
って言うか、たとえそれが3,000mだったとしても、これから越えなければならない物なら、いくら高くたって越えねばなるまい。

別に気にはしない。

しかし、ほかに歩いている人がいないので不安になる。

サンジャンの出口.JPG

いや、いた。

よもやこの場所で単なる日帰りのハイキングではあるまい。
でも、その割には軽装だ。
まず第一に、リュックがない。
金髪の3人組熟女隊。
思い切って話しかけてみる。

「そうよ。私たち、カミーノを歩くの。」

その割には軽装だし、出発時刻だってずいぶん遅い。僕も人の事は言えないが。

「うーん。そうね。でも、荷物はタクシーで次の街まで運んであるし。」

!!なるほど!その手があったか!

「頭良いね!」

彼女たちはピーチク話しながら歩いていた。


サンジャン郊外.JPG



いつの間にか彼女たちともはぐれ、僕は、山道を一人寂しく歩いていた。
一見のどかではあるが、時間も押し迫っていたし、初めての土地。
不安でいっぱいだった。

しばらく行くと、本格的な登りになってきた。

あ、あそこが事務所の壁に貼ってあった写真の場所だ。
え~!あの山越えるのー?マジっすか?


注意3.JPG


どうやら僕は、とんでもないところに迷い込んだらしい。

岩だらけの山道を超える。
女の二人連れを追い越すが、助けてあげる余裕はない。

しばらく行くと、メキシコから来たという男に出会う。

「もうすぐフランスとスペインの国境だぜ、知ってるかい?」

いつの間にやら国境まで来ていたらしい。
しかしそれらしい目印は何もない。
どうやら、何とかという水飲み場があり、そこらあたりが国境らしい。
別に、イミグレーション事務室があるわけでもない。
何ともアバウトだ。
しかも、そこを過ぎれば、あとは水を飲む場所はないらしい。
ペットボトルに水を補給する。

年輩の登山者に出会う。
マイペースだ。
「きっと頂上はもうすぐですよ。」
試しにそう言ってみる。もしかしたら、自分に言い聞かせているのかもしれない。
「そうね。」

しかし、頂上はいっこうに現れなかった。

足が痛くて休む。

もう、何度休んだ事だろう?

もう8年も前に買ったルーマニア製の靴を脱ぐ。
セールスをやっていた時に、ストレスから逃れるために登山をしようと思って買った靴。
結局まともに登山はしなかった。
オートバイに乗るときに履いた事の方が多かった靴。
でも今は役に立ってくれている。

足首までしっかりサポートしてくれるので、山道でもねんざの心配はない。
こんな山の中で歩けなくなったら、次の日に発見されるまで、救出される見込みはない。

疲れているので横になる。

ウトウトしていたんだろう。
いったいどのくらい寝ていたんだろう?
ゆっくりしている暇なはい。
しかし、何度か繰り返し休まなければならなかった。

とうとう来たらしい。頂上だ。

しかし、今度は下りがえげつない。

「ヘイ。大丈夫かい?水はあるのか?」

誰かが話しかけてくる。

「ああ、大丈夫だ。水は持ってるよ。」

「俺は膝が弱くてね。このサポーターをしなくちゃ。」

と言いながらリュックからサポーターを出し膝にはめた。
そして、さらにポールを両手に持って下っていった。

見ると、本当に見事な下り坂だ。

僕とてそれほどの痛みはないが、かなり膝にはきているのは事実だ。
この坂を下るほどの勇気はない。
仕方がないので、舗装路を歩く事にする。
遠回りではあるが、膝に負担はない。

山をまっすぐに下るダートに対して、大きく迂回する事になる舗装路。
結局、次の村に到着したのは、軽く7時を回っていた。

Oh my God!
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カミーノ・デ・サンチアゴ~サンジャン・ピエ・ド・ポー [旅]

車窓からは、線路と並行して走っている小さな川が見え隠れしていた。
しばらく眺めていると、見えた!

一瞬だけど。

思わず振り向いて、さっきちらっと見えた赤いリュックを探す。

あ~!もうここから歩いているやつがいるんだ!

ワクワク・ワクワク♪

さっきまで頭の中で鳴り続けていた「松岡直也」の曲が一転してワクワクモードに切り替わった。

それにしても、朝早くにこの列車に乗って正解だった。
青々と茂った自然の中をゆっくりと走っていく。

きれいだ。


サンジャンピエドポーの駅.JPG

到着した駅は、想像していたよりもずっと小さかった。
しかし、間違えて行ったポーとは違い、こんな時間にもリュックを背負った数人の旅行客がいる。
彼らもカミーノを歩くとは限らないが、くっついていけば間違いないだろう。

天気は快晴。最高に気持ちがいい!

小さな街の中を歩いていくと川を渡り、目的の事務局へ到着する事が出来た。
へ?っと思うほど小さな事務所。

サンジャンの事務所.JPG

中には3つの受付があり、それぞれ年輩の女性がすでにほかの人たちの受付をしていた。
待つ事しばし。









僕が日本人だとわかると、彼女は一枚の日本語で書いた注意書きをくれた。
何々?

「初日はピレネーの山越えなので○○km歩かなければなりません。重いリュックを背負って次の街まで到着するためには○時間は必要でしょう。遅くても8時までには出発した方がよいでしょう。」

ふむふむ。

!!!って、もうとっくに10時を回ってるじゃん。
とは言え、ここに一泊する時間的な余裕はないだろうな。

思いがけず出発する事になった。
と言うか、出発するためにここに来た訳なのだが。
心の準備も、装備の面でも何となく不十分な気がする。

まあ、なんとかなるべ。

とりあえず、食料の調達だ。
と言っても買いそろえたのはフランスパンを一本だけ。

おー!

サンジャンの門.JPG

これだ!この橋。この前読んだ写真集に載ってたやつ。マントと帽子をかぶった西洋人が並んで写っていた写真。

そうだ!ここからスタートするんだ!ここから出発するためにわざわざサンジャンまでやって来たんだ!
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カミーノ・デ・サンチアゴ~バルセロナ [旅]

バルセロナに着いたのもまた、夜だった。
どこにいても夜は怖い。
ましてや知らない異国の地となればなおさらだ。
だが幸いなことにバルセロナには去年も来ている。
記憶が正しければ、10分ほど歩けばユースがあるはずだ。

飛行機の発車時刻に遅れがなければ、そのままポーに向けて列車に乗り込んでいたはずなのに。

クソー!

移動にはトラブルは付き物とは思いつつ…
でも、これじゃあ20年前のインドとさして変わらないじゃないか。
ただ、乗り物がきれい、建物がきれいだけの違い。
平気で3時間も待たせたあげく機内食も無し、しかも、何事もありませんでしたー的な笑顔で平然と機内販売。おまえら当然買うんだろうな?て言う雰囲気。
空腹がイライラに拍車をかける。

空腹?

そうだ。オレは朝食べたっきり何も食べていないんだった。
飛行機に乗ればきっと機内食にありつける、そう思っていた自分の甘さにも腹が立った。

まあいい。ユースに着けば何か喰える。

やっと到着した空港。暗~い。
バルセロナ駅までは電車で行く。これは有り余る待ち時間にちゃんとネットで調べていたのでそれほど心配していない。
でも、結構時間がかかる。
しかも、駅名は「バルセロナ駅」ではない。「バルセロナ・サンツ駅」だ。
こういうのが紛らわしい。

駅で一番早いポー行きの電車を予約する。
だがポーはフランスなので、フランスまでのチケットは予約できない。
とりあえず最寄りのスペイン領までのチケットを買う。
朝早い便だ。

よーし!とりあえずスペインまでは来た。とにかく来た。ポーまでは後もう少しだ。
しかし、スタート地点まで来るのに相当回り道したな。ま、いいか。

夜のバルセロナをビビりながら歩き、やっとの思いでユースに着いた。
チェックインを済ませる。部屋は真っ暗で、みんな寝静まっている。

参ったなー…シャワーは部屋の中にある。これじゃあシャワーの音でみんなを起こしてしまう。仕方がない。シャワーは諦めっと。

ロビーに行って飯を探す。確か自販があったはず。
おー、あるある。小銭小銭と。ムムッ?無い。そうか。両替したばっかりだった。
フロントで両替は…無理?そうだよな。海外では普通は出来ないと思った方がいい。
と言うことは…?仕方がない。飯も諦めよっと。

ここは朝食付きなんだけど、その前には出発しなければならない。
はー。仕方がない。朝飯も諦めよっと。

ベッドに潜り込む。

早っ!もう朝?

結局同室の誰とも顔を合わすことなく、僕はバルセロナを後にしたのだった。

オレは一体何をしているんだ?
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カミーノ・デ・サンチアゴ 2010~夜のブルーモスク [旅]

イスタンブールに着いたときには、もうすっかり暗くなっていた。
でも大丈夫。
前回は心配してタクシーを使い、それでなくても高い料金をさらにボラれると言う体験をしていたので、今回はちゃんとバスに乗る。

ははは、これで大丈夫。

と思ったら、バスは目的地の旧市街(新市街?未だに区別がつかん。)ではなく、全く違った場所におろしてくれた。ありがたや。

ははは、これでめげると思ったら大間違い。
僕はちゃんとトラムにも乗れるのだ。参ったか。

街はラマダンのお祭りで大にぎわいだ。
ラマダン?去年もその時期にブチ当たったな。
今年は去年よりも早い時期に来てるのにまた?よっぽど縁があると見える。

夜のブルーモスク.JPG
















そうこうしているうちにホテルに着いた。
うん、懐かしい。あのホテルだ。あのユース。あの11ユーロの。
もう真夜中だ。しゃー無い。とりあえずビールだ。

昨年も親切にしてくれたフロントの兄ちゃんに挨拶。覚えていてくれた。ちょっと太ったんじゃない?

フェリーで黒海を渡ってブルガリアまで行けるって本当かい?え?ないのー!
なーんだ。これじゃあ飛行機で直行は決定だな。
バルカン半島北上も少し楽しみにしていたりする。

翌日が大変。

朝も早よから旅行代理店周り。10件も回っただろうか?
やっとの思いで取ったチケットは210ユーロ。思ったより高いが仕方がない。
よーし、もう決めた。

出発は明日の昼なので、今日はもう何もすることがない。
ブルーモスクの前の芝生で昼寝をし、絵はがきを書き、お祭りを冷やかしてぶらぶらした。

前回見逃したグランド・バザールを冷やかし、トプカピ宮殿を見る。
だが、やはりここはイスタンブールだ。
ここだけを見てトルコを判断してはいけない。
一歩外に出るとそこは全く違う世界なのだ。
でも今回はそこへは行かない。

僕はまっすぐスペイン、バルセロナへと向かった。
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カミーノ・デ・サンチアゴ 2010~ソウル [旅]

接続の関係で、行きと帰り韓国にそれぞれ1泊ずつすることになる。
どちらか1泊は空港会社で用意してくれる。サービスだ。
帰りのフライトの時間が早いので、サービス分は帰りを使うことにする。
なぜなら、空港会社は空港に近くて良いホテルを用意してくれるし、たいがい空港までの無料のリムジンバスを用意しているからだ。朝早いときには便利だ。

と言うことで、行きは自分でホテルの予約をしなければならなかった。
しかし今は良い時代だと思う。
自宅にいながらにして、ネットとメールでソウル市内のホテルを予約できるのだから。

決めたのは「大元ホテル」。外国人専用のゲストハウスだ。もちろんドミトリー。



大元旅館.JPG
















バスでソウル市内まで行き、迷いながらやっとの思いで宿に着く。

韓国に行ったら「ジャージャー麺」を食べてみたいと思っていたので(ささやかな夢だ。)、さっそく近くの食堂へ繰り出す。
地元のお姉ちゃん達がいるような大衆食堂だ。





ジャージャー麺.JPG
















さてここでとても大切な出会いがあった。

6人のドミには先客がいたが、僕が会ったのは二人。
日本人の年輩の男性と台湾の学生だ。
台湾の学生はとても流暢に日本語を話す。

二人に挨拶をして僕のこれからの予定を話したところ、イスタンブールから飛行機でスペインまで行ってしまえばいいと言う意見が出た。
「えー?だって飛行機なんて高いじゃん。」て言うと、どうやらヨーロッパの国内線はとても安いのだという。格安航空券になるとわずか5~6千円とか。
う~ん。にわかに信じがたい。

もしそれが本当だとしたら、確かに安いし早い。一気にパリまで飛んでしまえば、もしかしたらカミーノだって完歩出来るかもしれない。
まあ、イスタンブールがヨーロッパであるかどうかは微妙なので若干割り増しになるかもしれないが、それにしても陸路で宿泊しながら行くよりはずっと安いには違いないだろう。

さっそく宿にあるPC(なんと無料なんだぜ!)で調べる。
いや、実は調べてくれたのは台湾の学生だ。
彼は母国語の他に日本語、英語も話す。英語は大学で第1外国語として専攻しているらしい。すごい!
彼はまた、旅慣れてもいる。世界各地を旅し、珍しい中央アジアなどにも行った経験があるのだ。

最安値で16,000円と言うところか。まあ、許容用範囲だ。
イスタンブールに着いたらチケットを買うことにする。

しかし、すっかり諦めていたカミーノだったが、これで歩ける可能性がぐっと増えた。
もし、この宿に泊まらなければ、恐らくバルカン半島を北上していたに違いない。

僕は、いつもながらの旅の不思議をかみしめるのだった。
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カミーノ・デ・サンチアゴ 2010~サン・ジャ・ピエ・ド・ポー [旅]

旅の計画を立てたのは1年前。
そのころ僕はヨーロッパの放浪の旅を終え、また元の現実世界に戻ったばかりだった。

旅は僕を元気にしてくれた。
つらく苦しいことの方が多かったはずだが、帰国してみればそれらは素晴らしい思い出でしかなくなる。
旅立つ前、既にそんな予感があった。
生きる希望を失っていた僕の本能のようなものが、僕を旅立たせたのかもしれなかった。

その本能がまたも僕にささやきかける。

旅に出ろ。

イタリアで変わった男に会った。

彼は街角でリコーダーを吹いていた。
彼の前にはコインを入れる皿が一枚。中にはコインが何枚か入っていた。

「よー。何してるんだい?」と問いかける。見るからに汚く、乞食のようだ。
彼はニヤッと笑った。
「ローマからさ、歩いて帰るのさ。スペインの自宅までね。」

彼の英語はひどいスペイン訛りでよく聞き取れなかったが、話を要約するとこうだ。

彼はスペイン人だが、ローマから徒歩でスペインにある自宅まで帰るという。
途中はこのように路上で笛を吹いてお金を稼ぎ、お金が有ればホテルに泊まり、無ければどこかで野宿する。でもなかなかお金は集まらない。それどころか、笛を吹いているとお巡りが来て追い払われるのだよ。イタリア人は冷たいと。

なんとクレージーな!

「スペイン人ってみんなクレージーなのかい?」
「いーや、そうじゃないよ。でもね、そんなに珍しいわけでもないんだよ。例えば×●△♂◎とか、カミーノとか…色々な巡礼路があってね…。」
「!!!カミーノ?あーそれ、オレ聞いたことあるよ!」

実は何年か前、女優「シャーリー・マクレーン」の「カミーノ」という本を読んでいた。確かにスペインを徒歩で旅するという内容で、道中に色々な神秘的体験をするというものだった。

そうか、その道がすぐ近くにある。

実際にはその時には全く「カミーノ」に行こうなどと考えはしなかった。
ところが帰国してから、今回の旅で気まぐれに行き当たりばったりに辿ってきた道を思い返し、反省し、必要なことを調べたりしているうちに、いつの間にか「カミーノ」を歩いてみたいと思うようになった。

具体的には、シャーリー・マクレーンの「カミーノ」を読み返し、パウロ・コエーリョの「星の巡礼」、黛まどかの「星の旅人」を読み、「カミーノ」に関するものは手当たり次第読んだ。
そうしているうちにすっかり僕は「カミーノ」に魅せられてしまったのだ。

決定的だったのはたった一枚の写真だった。

それは、「カミーノ」の写真集の中の一冊だった。
表紙には白人の若い女性が写っている。
彼女はリュックを背負い、手には杖を持ち、ホットパンツにトレッキングシューズ。そしてスペインの荒野の中にある果てしなく続く一本道に、たった1人で挑んでいるのだ。

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凄い!最高に格好良い!オレもやってみたい!

「カミーノ」をまとめてみるとこうなる。

①パリをはじめ、ヨーロッパの各地からスペインの西海岸に近い「サンチアゴ・デ・コンポステータ」まで、徒歩・自転車、または馬で向かう。
②道はいくつかあり、一番メジャーなのが「フランス人の道」と言われるパリからの道。
③しかし多くの人はスペイン国境に近いフランスの町、「サンジャン・ピエ・ド・ポー」からスタートする。
④「サンチアゴ・デ・コンポステータ」にはキリストの12使徒の1人、ヤコブの墓があり、そこまで歩くには約1ヶ月かかる。それはスペインのあるイベリア半島をほぼ横断することを意味する。
⑤途中には「アルベルゲ」と呼ばれる巡礼者用の宿泊施設があり、とても安く泊まれる。平均500円とか。
⑥巡礼は1,000年以上もの歴史があり、今も毎年2万人もの人が全国各地から集まってくる。

素晴らしい!

歩くから移動にお金がかからない。
巡礼用の宿があるから安く泊まれる。
と言うことは、1ヶ月間旅しても1万5千円から2万円位で済む!この物価の高いヨーロッパで。
しかも世界から集まってくる人たちと交流が出来る。

こんな素晴らしいことがあるだろうか!

シャーリー・マクレーンの「カミーノ」を読んでいるときには、まさか自分が彼女と同じ道をたどろうなどとは考えもしなかった。

しかし今、僕はその道に一歩踏み出そうとしている。

いや、一年前、僕は既に「カミーノ」を歩き始めていたのだ。
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カミーノ・デ・サンチアゴ 2010~プロローグ [旅]

何?ここじゃない?
僕は彼の言葉に呆然と立ちつくした。

いや、そう言われる前にすでに分かっていた。
だって、駅に降りたった時点ですでにおかしな雰囲気満載だったから。
ツーリストインフォでは「カミーノ?ウン知ってるけど?あの歩くやっちゃろ?事務局?知らんな~」。
街角でも「あー、知ってる知ってる。頑張ってねー!」ってまるでよその世界の話をしているような。
これから歩き出すんですよー、って言う感じが全く無かったから。

つまりこういうことだ。

名前は同じ「ポー」と言う町だが、ここは僕が行こうとしている「ポー」ではなく、違う「ポー」に来てしまったと。日本語にすれば同じ「ポー」だが、僕が本来行くべき「ポー」は「サン・ジャン・ピエ・ド・ポー」であり、「ポー」は確かPOAT 綴る。
さて問題は、もうすでに日も傾きはじめ、夕暮れが迫っていると言うことだ。
駅から遠く離れたこの丘の上にあるツーリストインフォもすでに閉まっていた。
仕方なく付近にいる通行人を手当たり次第に問いつめてやっとそこまで分かった。
これからどうしよう?答えは自分で考え導き出さねばならない。それが、旅だ。
今までもずっとこういう場面に遭遇してきたし、これからも避けては通れない道。

と、その時「Closed」の看板がぶらさがっていたドアが開き、ツーリストインフォのお姉ちゃんが出てきた。そしてある程度事情を説明すると、姉ちゃんはまた事務所に戻っていった。そして次に出てきた時、手にしていたものは…
「サン・ジャン・ピエ・ド・ポー」行きの列車の時刻表、ウィンドウブレーカー、そして、青いビニール袋。

助かったぜ!ベイビー!

時刻表があるお陰で、出発時刻を確かめに駅まで行く必要が無くなった。
ウィンドウブレーカーは、たった今降り出した土砂降りの雨をしのぐ事が出来、
青いビニール袋は食料を入れることが出来た。でも、それはもっと後のこと。

時刻表によると、もうこれからの列車の便はなく、今日はここで泊まるしかなさそうだ。痛い出費だが仕方有るまい。

それでも、紹介してもらった宿は20ユーロ。物価の高いヨーロッパにしては格安といえそうだった。
僕は、翌朝一番の列車に乗る為に早めにベッドに潜り込んで考えた。

そもそも1年近くも前から計画していたにもかかわらず、何でスタート地点を間違えるかなー?

大体この旅は最初からついていなかった。

5月の連休明けに予約していたパリ行きのチケットは最後までとれず、9月後半に予定していた出発の1週間前でさえ、まだ手元にチケットがなかった。
結局パリ行きは取れないと分かり、最後の最後まで行くかどうか迷った。

「カミーノ」を歩き通すには最低でも32日はかかる。
だが、僕の休暇は37日しかない。
スタート地点はスペイン国境に近いフランスの町だから、パリが一番近い。
行きと帰りに韓国で1泊ずつしなければならないことを考えると、パリに着いて、うまく列車の接続が有れば、何とかぎりぎり歩き通せるだけの日数が確保できる。
しかし、パリ行きの望みが絶たれた今、「カミーノ」完歩もまた、絶望的となった。

一年も前からカミーノ行きだけを望みに生きてきた。
行けないならやめてしまおうか?
いや、もう休暇は取ってある。また来年休暇を取れるかどうかは分からない。
では行き先を変更するか?いや、すでに資金はユーロに替えてしまっている。
ユーロ圏内の他の場所に行くには、ヨーロッパの物価は高すぎる。
そんなに予算はない。

最後まで悩んだあげく出した結論は、「とりあえず行ってみる」だった。
そして僕は「イスタンブール」行きのチケットを手に入れた。

計画はこうだ。

まず「イスタンブール」に行く。
前回はそこからギリシャに抜けたが、今回はバルカン半島を北上して陸路、ブルガリア、ルーマニア、オーストリア、ドイツ、スイス、フランスを抜けて、もし時間があったら「カミーノ」を歩き、帰りはマドリッドから空路で帰国する。
予算は心許ないが、せっかく取れた休みを無駄にしたくなかった。

しかし出発してから1週間後、間違いとは言え、僕は今フランスにいる。
そして何の因果か運命か、僕はいよいよ明日、「カミーノ」のスタートに立とうとしていた。

これだから旅は面白い。と、にやにや笑いながら眠りについた。

しかし、これはほんの始まりにすぎなかった。
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「僕の深夜特急」第3便~パリ [旅]

 花の都、パリは、昨日のリヨンから引き続きの雨のせいか、いまいち華やかさに欠けていた。

最後の最後に雨である。

おまけに、ローマであった日本人が、パリでジプシーの日本人狩りにあったという話が僕の頭にこびりついて離れなかった。僕はどうでもいいことには大胆なのに、そのくせ案外気が小さい。

 パリのホテルで一人、本を読んでいた。
モームの「月と6ペンス」だ。ちょうど舞台がパリだった。奇妙な偶然だ。

だいたい、モームなんて好きでも何でもなかった。なのに、持ってきたのには理由がある。
出発直前、車で買い物に出かけたときに偶然ラジオの番組で紹介していた。それまでモームは読んだことがなかった。短編集は持っていて、一度チャレンジしたが、何ページか読んで挫折し、それっきり本棚に並んでいる。

たまたま紹介していた本の内容がゴーギャンで、それがただちょっと僕の興味を引いただけだった。
それなのに、読んでみるとおもしろいし、ロケーションは偶然にもここパリから、僕が通ってきた南フランスのアルルが出てきたりして、とても心の中に入ってきた。アルルは見物こそしなかったが、フランスに関して何も知らないはずの僕なのに、妙に気にかかる地名だった。列車で通ったが、降りるかどうか迷ったのも事実だった。

その後モームはもっと重要な役割を果たすことになる。だがそれはずっと先のことだ。


雨が上がったので、パリ見物に出る。



PA090123.JPG















地下鉄の回数券を買う。もう現金は底をついた。キャッシュカードで切符の自販を使う。そういえば、この時にカードを抜かれたって言ってたな。十分に気をつける。後ろに人が並ぶ。焦る。カードを抜かれないようにガードする。ふー!終わった。切符を買うのにも一苦労だぜ。すると、後ろから声がする。お!来たか!すると、「レシート忘れてるぜ」!!!なーんだ。幽霊の正体見たりってやつだ。まったく。







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大きい町は苦手だ。どうしていいのか分からない。とにかく知っている場所を回ることにする。











PA090121.JPG




美術館には興味はない。これがこの旅の終わりなのか?

僕はシャルル・ド・ゴール空港へ向かった。


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